療育手帳にはA(重度)、B(中軽度)などの等級(程度)がありますが、その違いを知っていますか?
自分がどの等級なのかはもちろん把握しておくべきですが、なぜその等級になったのか、判定基準も合わせて覚えておきたいですよね。
また、等級(程度)によって受けられるサービスや割引等にも違いがあります。
そこで今回は、療育手帳の等級(程度)とその違いについて詳しくまとめました。
対象になる方やそのご家族の方は是非目を通してみてください。
療育手帳の等級(程度)とは?
療育手帳の等級(程度)とは、知的障害の重さを表す区分のことです。
国から各都道府県や政令指定都市あての通知によると、重度の場合は「A」、その他の場合は「B」と表示するように指導されています。
ただ、表記については地域によって、A1、A2、B1、B2のようにより細かく区分されていたり、1級、2級、3級、のように数字で表されている場合もあります。
また、それ以外の療育手帳に関する基準にも、地域によって若干のばらつきがあります。
これは療育手帳は身体障害者手帳や、精神障害者保健福祉手帳と異なり、国ではなく各都道府県や政令指定都市の条例で実施されているものだからです。
ですから、名称も「療育手帳」の他に、各都道府県によって違う場合があります。
例
青森県:愛護手帳
東京都:愛の手帳
さいたま市:みどりの手帳
等級(程度)の判定基準
療育手帳に関する基準は地域によってばらつきがある為、その判定基準にも若干の違いがあります。
例、東京都の判定基準(18歳以上成人)
名称:愛の手帳
区分:1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)
1度(最重度)
最重度とは、知能指数(IQ)がおおむね19以下で、生活全般にわたり常時個別的な援助が必要となります。
例えば、言葉でのやり取りやごく身近なことについての理解も難しく、意思表示はごく簡単なものに限られます。
2度(重度)
重度とは、知能指数(IQ)がおおむね20から34で、社会生活をするには、個別的な援助が必要となります。
例えば、読み書きや計算は不得手ですが、単純な会話はできます。
生活習慣になっていることであれば、言葉での指示を理解し、ごく身近なことについては、身振りや2語文程度の短い言葉で自ら表現することができます。
日常生活では、個別的援助を必要とすることが多くなります。
3度(中度)
中度とは、知能指数(IQ)がおおむね35から49で、何らかの援助のもとに社会生活が可能です。
例えば、ごく簡単な読み書き計算ができますが、それを生活場面で実際に使うのは困難です。
具体的な事柄についての理解や簡単な日常会話はできますが、日常生活では声かけなどの配慮が必要です。
4度(軽度)
軽度とは、知能指数(IQ)がおおむね50から75で、簡単な社会生活の決まりに従って行動することが可能です。
例えば、日常生活に差し支えない程度に身辺の事柄を理解できますが、新しい事態や時や場所に応じた対応は不十分です。
また、日常会話はできますが、抽象的な思考が不得手で、こみいった話は難しいです。
知能測定値
標準化された知能検査、社会生活能力検査又は乳幼児用の精神発達検査を用いた結果、算出された知能指数およびそれに該当する指数について、下の程度別に判定。
1度(最重度) | 知能指数およびそれに該当する指数がおおむね19以下 |
2度(重度) | 知能指数およびそれに該当する指数がおおむね20~34 |
3度(中度) | 知能指数およびそれに該当する指数がおおむね35~49 |
4度(軽度) | 知能指数およびそれに該当する指数がおおむね50~75 |
知的能力
文字や数の理解、物事の判断および日常生活における教養、娯楽物等の利用能力について、下の程度別に判定。
1度(最重度) | 文字や数の理解が不可 |
2度(重度) | 文字や数の理解がわずかに可能 |
3度(中度) | 表示をある程度理解し簡単な加減ができる |
4度(軽度) | テレビ、新聞等をある程度日常生活に利用できる、給料等の処理ができる |
職業能力
作業能力又は職業としての作業能力の程度について、下の程度別に判定。
1度(最重度) | 簡単な手伝い等の作業も不可能 |
2度(重度) | 簡単な手伝い程度は可能 また、保護的環境であれば単純作業が可能 |
3度(中度) | 助言等があれば単純作業が可能 |
4度(軽度) | 単純作業は可能であるが時に助言等が必要 |
社会性
対人関係の理解、集団的行動の能力、また一般的社会生活の能力について、下の程度別に判定。
1度(最重度) | 対人関係の理解が不可 |
2度(重度) | 集団的行動がほとんど不可能 ただし、個別的な援助があれば限られた範囲での社会生活が可能 |
3度(中度) | 対人関係の理解および集団的行動がある程度可能 また、適当な援助のもとに、限られた範囲での社会生活が可能 |
4度(軽度) | 対人関係の理解および集団的行動がおおむね可能 また、適当な援助のもとに、社会生活が可能 |
意思疎通
言語および文字を通しての意思疎通の可能な度合いについて下の程度別に判定。
1度(最重度) | 言語による意思疎通がほとんど不可能 |
2度(重度) | 言語による意思疎通がやや可能 |
3度(中度) | 言語が未発達で文字を通しての意思疎通が不可能 |
4度(軽度) | 日常会話(意思疎通)が可能。また簡単な文字を通した意思疎通が可能 |
身体的健康
身体の発達、その健康状態又は合併症等に関する健康上の配慮について、下の程度別に判定。
1度(最重度) | 特別の治療、看護が必要 |
2度(重度) | 特別の保護が必要 |
3度(中度) | 特別の注意が必要 |
4度(軽度) | 健康であり、特に注意を必要としない |
日常行動
日常行動の状況について、右の程度別に判定。
1度(最重度) | 日常行動に支障および特別な傾向があり、常時保護および配慮が必要 |
2度(重度) | 日常行動に支障があり、常時注意および配慮が必要 |
3度(中度) | 日常行動にたいした支障はないが、配慮が必要 |
4度(軽度) | 日常行動に支障はなく、ほとんど配慮を必要としない |
基本生活
食事、排泄、着脱衣、入浴、睡眠等みずからの身辺生活の処理能力について、右の程度別に判定。
1度(最重度) | 身辺生活の処理がほとんど不可能 |
2度(重度) | 身辺生活の処理が部分的に可能 |
3度(中度) | 身辺生活の処理がおおむね可能 |
4度(軽度) | 身辺生活の処理が可能 |
※0~6歳(就学前)、6~17歳(児童)の基準には若干の違いがあります。
その他の地域の区分
福岡県
区分 | 表示 | 程度 |
A | A1(最重度) | IQ20以下 |
A2(重度) | IQ21〜35 | |
A3(重度 合併) | IQ36〜50で身体障害者手帳1〜3級を所持 | |
B | B1(中度) | IQ36〜50 |
B2(軽度) | IQ51〜概ね75 |
愛知県
区分 | 程度 |
A判定 | IQが35以下で日常生活において常時介護を要する方(身体障害者手帳1級から3級に該当する方は、IQが50以下) |
B判定 | A判定に該当する方を除き、IQが50以下の方 |
C判定 | A・B判定に該当しない方で知能指数IQが51以上75以下の方 |
北海道
表示 | 区分 | 程度 |
A | 最重度 | おおむねIQ20以下 |
重度 | おおむねIQ20-35 | |
B | 中度 | おおむねIQ35-50 |
軽度 | おおむねIQ50-70ないし75 |
大阪府
重度「A」、中度「B1」、軽度「B2」
千葉県
障害程度 | 判定の基準 | |
最重度 | A | 知能指数がおおむね20以下の者で日常生活において常時の介助を必要とする程度の状態にある者 |
重度 | Aの1 | 知能指数がおおむね21以上35以下の者で日常生活において常時の介助を必要とする程度の状態にある者 |
Aの2 | 知能指数がおおむね36以上50以下の者で視覚障害、聴覚障 害、肢体不自由を有し、身体障害者福祉法に基づく障害等級が1級、2級または3級の手帳を所持しており、日常生活において常時の介助を必要とする程度の状態にある者 | |
中度 | Bの1 | 上記以外の者で、知能指数がおおむね36以上50以下の者で日常生活において介助を必要とする程度の状態にある者 |
軽度 | Bの2 | 知能指数がおおむね51以上75程度の者で日常生活において介助を必要とする程度の状態にある者 |
第1種、第2種とは?
療育手帳では等級(程度)の他に、主にJR運賃の割引を受ける際に必要になる、第1種と第2種という区分があります。
手帳の「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」という欄に記載されています。
第1種の判定基準
・知能指数がおおむね35以下で、日常生活において常時介護を要する程度の方
・肢体不自由、盲、ろうあ等の障害を有し、知能指数がおおむね50以下で、 日常生活において常時介護を要する程度の方
第2種の判定基準
上記第1種以外の方
これについては別の記事で詳しく解説しているので、そちらの記事もあわせてご覧ください。▼
等級(程度)によって受けられるサービスの違い
療育手帳の等級(程度)が重度Aか(東京の場合1度、2度)それ以外のBか(東京の場合3度、4度)によって受けられるサービスに違いがあります。
医療費の助成
地域によって異なりますが、重度Aの方は医療費の助成を受けられる場合があります。
詳しくはお住いの地域の担当窓口へお問い合わせください。
自動車税、自動車取得税の減免
地域によって違いがありますが、重度Aの方が対象の場合が多いようです。
東京都の場合1度〜3度の方が対象になります。
詳しくはお住いの地域の担当窓口へお問い合わせください。
NHK受信料の免除
重度Aの知的障害者と判定された方が、世帯主で受信契約者の場合、半額免除。
税金の控除、非課税
所得税の控除
重度A:40万
中軽度B:27万
贈与税の非課税
重度A:6000万円まで非課税
中軽度B:3000万円まで非課税
相続税の控除
重度A:85歳に達するまでの年数1年につき×20万円
中軽度B:85歳に達するまでの年数1年×10万円
第1種、第2種によるサービスの違い
JR運賃
第1種の方とその介護者は普通乗車券、回数乗車券、普通急行券、定期乗車券が50%割引。
第1種、第2種の方が単独でご利用になる場合は普通乗車券が50%割引。(片道100kmを超える場合)
有料道路
障害者本人以外の方が運転し障害者本人が同乗する場合、療育手帳の交付を受けている方のうち、第1種の方が対象で通常料金の50%引き。
その他にも療育手帳を所持していることで受けられる割引がいくつかありますので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。▼
最後に
療育手帳は各都道府県や政令指定都市が実施している制度ですので、しっかりと自分の地域の基準を把握しておくことが大切です。
例えば、引っ越しをした際などは基準が変わるのでややこしいかと思います。
将来的には国で統一して欲しいところです。